こんにちはきせつです。
今回はジョジョの奇妙な冒険で有名な荒木飛呂彦先生の新書
「荒木飛呂彦の漫画術」のまとめ・感想になります。
この本は荒木飛呂彦の考える漫画の王道を伝えてくれる。
漫画の王道とは?
荒木氏は漫画の構造を四大要素であるとして以下の項目を挙げている。
・テーマ
・キャラクター
・ストーリー
・世界観
テーマは作品の軸を決める重要な部分になります。
少年漫画というのは連載という形で続いていきます。
その中で軸をずらすことなく話を続けていくというときに指針になるのがテーマになります。
テーマとは作者の哲学がにじみ出ます。同じテーマであったとしても掘り下げていけば作者毎に話が別の物事になるでしょう。
「売れるテーマ」で書くことは失敗のもとです。
売れるテーマとは流行の事であり、流行は移り変わっていきます。
再びになりますが連載という形式である以上一度過ぎてしまった自分の外にあるテーマを軸に書き続けるのは苦しいです。
例え売れにくいテーマであっても自分の好きを追求するテーマの方がよいでしょう。
好きを妥協するのではなく読者に好きになってもらう工夫をしましょう。
漫画の中で特に強力なのが「キャラクターである」
これだけあれば漫画が描けると言い切る漫画家もいます。
どれだけ魅力的なキャラクターを書くことができるかが人気漫画を左右する。
主人公に必要な要素は様々だが既存の人気主人公は簡潔にその在り方を説明することが出来ます。
それは動機がしっかり練られているからです。
良い主人公とは行動と動機が結びつきなおかつ読者が共感できることです。
どういった動機が共感されるか、それは人間の根源的な動機に根差していることです。
例えば好奇心、愛情、復讐などです。こういった事は多くの人々に共感されやすい理由です。
日々の中で普遍的でありつつ面白い動機を探してみましょう。
悪役や仲間については主人公と被らないように正反対に書いて対比を使ったり、背の高い低い太ってる痩せてるなどや善と悪でキャラ付けが被らないようにして、主人公にはさせられない変なことやあくどい事をさせて強調しましょう。
ライバルを超えるべき壁や障害として主人公の掲げる動機を妨害するようにすると達成の為に主人公が前進する様が描きやすくなります。
ストーリーとは何か私は作中の
「ゆるキャラ」はキャラを作っているだけで、エピソードを彼らに与えてあげないので古くなっていきます。」本文第四章P106より
ストーリーの良さはエピソードによってキャラクターが「現在」につながるからです。
動かないキャラクターは時代の流れにどんどん置いていかれてしまいます。
サザエさんやちびまる子ちゃんなどのご長寿番組で古臭いと思わず今の作品と思われているのはそういうことなのだと思います。
仮にある地点で新作を作らず既存エピソードの再放送のみになったら例えずっと放送を続けても古いキャラクターになってしまうでしょう。
時代を超えるためにエピソードを与え続けるというのは手段の一つなのです。
ではエピソードのつながりであるストーリーの基本とは何か?荒木氏は「起承転結」と書いています。
転を連続させて「起・承・転転転転転転・結」や結末を最初に持ってくる「結・起・承・転」など変形させることでパターンを作ることが出来ます。
プラスとマイナスの法則
物語の前進と後退をプラスとマイナスと表現して少年漫画として望ましい傾向をこう書いています。
「主人公は常にプラス」主人公は前進を続けなくてはいけません。
リアルに寄せてつい負けたり迷ったりということでマイナスを与えたくなるがそれは罠であると言っています。
作者はどれだけ苦しい場合も更に上に持っていく話を作る必要。
そんな中1980年代にジャンプで流行したのがトーナメント方式でした。
トーナメントは一戦一戦事に頂点に近づくという分かりやすいシステムです。
しかしこれは諸刃の刃です。
一度頂点になってしまうとその続きがどうすればよいのか分からないのです。
一度やったトーナメントを最初からやり直しというのは読者も作者も苦しいものです。
そんな中荒木氏が見つけたシステムがすごろくでした。
「ジョジョの奇妙な冒険」の第3章「スターダストクルセイダース」に採用され人気を博しました。
目的地に進むという+によって道中の敵を多種多様にすることが出来る自由度を獲得しました。
勝ち上がった者たちが更なる敵になるトーナメントでは敵はどんどん強くする以外の選択肢はほとんどありません。
しかしすごろくの前進が目的であれば障害は強い敵だけに限らない。
弱いがズルかったり狡猾だったり強さのインフレ以外で進んでいくことが出来ます。
しかしジャンルによっては常にマイナスということも作品の方向性という意味で一貫していればこれもありだと書かれています。ホラーなどでどんどん追い込まれていくというのはアリということです。
世界観について読者が求めている空気それを与えられる構築が求められます。
どういったことが世界観で重要か、それは調査に支えられたリアリティです。
物の理屈や実用された年数や制度など詳しい人には一発で分かってしまうことで意図的にずらしてするのならともかく最初から調べずに適当に書いてしまっては白けてしまう読者が増えることでしょう。
だからこそ可能な限り取材や資料集めを怠らずにリアリティを追求しましょう。
以上の4要素をまとめ上げ「絵」「言葉」を合わせるのが漫画という総合芸術になります。
作品を研究する場合も自分の作品を見るときもバランスチェックをする癖をつけることが大事。
何が良い作品かという自己判断をする目を養うことが王道を歩んでいく指針になることでしょう。
自作の欠点や強みを見極めてどんどんいい作品にしていく「マニュアル」ではなく新しく自分で歩んだ道を書き込んで行く「地図」であってほしい。そう後書きにて締めくくられています。
感想
ジョジョの奇妙な冒険の荒木飛呂彦先生の漫画制作術ということで一読者として楽しく読むことが出来ました。
私は漫画を描いたことはありませんが、文章による創作をやっていた時期があったのでもっと早く読んでいれば。
是非一度手に取ってみてください。
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