ヒルビリーエレジー 取り残された白人たち

こんにちは、きせつです。
現代トランプ大統領候補から副大統領に指名されているJ・D・ヴァンス彼の半生を描いた回想録。
ヒルビリーエレジーの書評を書いていきます。
この本を読めば現代のアメリカ白人労働者層の事を知ることが出来ます。

取り残された白人の悲哀

本書ではラストベルトと呼ばれる工業が撤退した地域に属するオハイオ州で成長した著者の暮らしを通して、ヒルビリー(田舎者)と呼ばれる白人アメリカ人の問題や苦悩を見せている。

この本を読んだとき私は非常に驚かされた。作者であるヴァンス氏の生まれが1984年で私の兄弟と同じ生まれ年、親近感を持ちつつも日本とアメリカという経済的にトップ層に属する国とは思えないほど暴力と危険に満ちた子供時代を過ごしていたからである。


本著は15章で構成されており、個人的な分け方だがおおよそ3章毎に区切られており祖父母の伝聞を通してヒルビリーがどういった文化を持つのか提示し、幼少期の話この時に家族の問題や生活環境がその地域の影響。
そして母親の薬物依存や支援者として助けてくれた祖母との暮らし。
海兵隊を通じて無気力から脱出し大学進学の末、ミドルタウンと呼ばれる地域から抜け出すことに成功する。


最期に抜け出せてなお成長期に受けた悪影響の後遺症に対する苦しみと階層が違う社会文化との適応の難しさ、劣悪な環境こそ抜け出すチャンスを潰してしまう家庭の歪さ。
この中から気になった部分について書いていきます。

ピックアップ

私が衝撃を受けたのがアメリカでの母親のパートナーの交換率である。フランスでは母のパートナーが2度以上変わるのが0.5%。世界第2位のスウェーデンで2.6%。アメリカは8.2%でとびぬけている。

国名割合おおよその人数
フランス0.5%200人に1人
スウェーデン2.6%40人に1人
アメリカ8.2%12人に1人

日本はどうなのだろうと少々調べてみましたが、出典が分からず不明でした。
アメリカでは家族について聞くことが難しいと何かで聞いたことがありました。


今も全てが分かったとは言いませんがこういった事情で再婚でもなくパートナーを替えその子供や連れ子を「家族」と呼ぶなら想像しやすい家族像とは全く違うモノでしょう。


そういった環境で子供が自己肯定感を持てるかというと話の中でも書かれていますが難しいでしょう。コロコロ名前が変わったり、知らない人を父親と呼んだり離れたりということを繰り返すと大人に対して不信感を持つというのは大変なことだと思います。

ヒルビリーとして20世紀前半の世界観を持った祖父母の代というのは田舎の労働者にとっても都市に移動し貧困から中流階級へのステップアップに希望が持てる時代だったようです。


生活様式や人間関係という点で一族で過ごしていた土地から都市部で血のつながりのない住宅地での軋轢や諍いというのはどこの文化圏でもあり得るのだろうなと思えました。
喧嘩っぱやく、名誉は命を懸けて守る償わせるという文化はすぐに命の危機がある地域では自衛の為に必要なことですが、一定以上の治安がある場所では簡単に厄介事を発生させるお荷物になってしまう。そういったギャップに筆者に至る3代に渡って生活を困難にさせています。

著者のヴァイスは海兵隊という隔離され尚且つ出身の違う人たちとの関わりの中で「学習性無気力」を克服できるようになった。


学習性無気力とは簡単に言えば自信喪失。
困難な環境の中で何をしても上手く行かない。
努力の結果をいとも簡単に破壊されるそういうことが続いていく中で自分に対して信用がなくなり、何もしないのが正解になってしまう。

それを軍隊の中の規律で習慣的な生活や訓練による能力の向上や全く出自の違う隊員たちに混ざることによって人種や貧富の差という条件ではなく訓練によって能力を向上、獲得できるという自信を付けて行った。


軍隊やアメリカに限らず自分なんてと思っている人はどこにでもいると思う。
私もそういう感情を持っていたし、今も持っている。何か一つでもこれだけは出来るという芯を作れるといい。

必要なのは自分がコントロールできることを何か持つことである。
そういった幸運に恵まれヴァイスは何とかラストベルトから抜け出すことが出来たが、それでも成人するまでに体に身についた不安感や攻撃的な物事の解決姿勢は彼を助けることはなくむしろ脱出してなお彼を苦しめる事になっている。
また子供の可能性の為に分離するのは良くないという視点も頷けるが、逆に富裕層から考えると治安等の理由で分離した環境で教育したいというのはまた当たり前の感想だと思う。

まとめ

一冊を通して近しい世代それもアメリカという世界一の大国であり続ける内部でこういう貧困や階級から生まれる無気力さによる悪影響の怖さを一つ見た気がする。

更に言えば日本でもそういう環境や人たちがいるというのは今後に影響していく要素だと思った。
自分も様々なことで世間を知らない物事があるというのは反省と共に視野を広げる事の重要性とアメリカンドリームということではないけれど自分も行動を持って成長していきたいと思う。


一冊を通して友人や家族に対して改めて感謝を持つことになった。いかに自分が恵まれて且つその要素を飛躍の為に活用できていない。みっともなさもあるがそれ以上に家庭が荒れず、きちんと教育受けさせて貰った恩に対して何が出来るかを行いたい。
度々そういうことは考えていたがこういう本を読んで改めて考えさせられた。


軽い気持ちで読んでみたがグイグイ引き込まれる本であった。
場所が変わり、成長しという話という目線で見るとある意味典型的な立身出世モノとしても読める1冊であった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました